あるご葬儀の最中、感情が高ぶって泣き崩れるご遺族の方がいらっしゃいました。

感情のコントロールができないご自身に混乱され、かなり取り乱されていらっしゃいましたが、

「涙を流されるのは、それだけ故人への深い思いがあるからです。無理に感情を抑え込む必要はありません。そのお気持ちを大切にしてください」

と私からお伝えし、涙を流すことが自然であることを安心して受け入れていただけるよう努めました。

その方は周囲に気を使い、心のままに涙を流すことに戸惑いがあるご様子でしたので、

「ここは故人を想う場です。涙を流すことは、故人への立派な供養です」

と声をかけ、他の参列者の目を気にする必要がないこと、安心してご自身の心に素直に故人に対する思いを表現できるよう、住職としての私の気持ちをお伝えしました。

場合によっては別室にご案内し、少しお休みいただけるような環境を整えることも心がけています。

こういった状況の時には感情が高ぶり過ぎて、ご遺族同士で思わぬトラブルになることもございます。

こうした配慮を通じて、ご遺族同士のトラブルを未然に防ぐよう努めています。

葬儀全体の進行にも気を配りながら、ご遺族の感情に寄り添い、儀式が滞りなく進むように心を配ります。

参列者の方々にも「この涙は、深い愛情からくるものです」と説明し、温かく見守ってくださるよう努めました。

他のご遺族の方の温かいご協力もあり、感情が高ぶってしまったご遺族の方はしだいに気持ちを落ち着かせ、葬儀を無事に終えることができました。
「住職のお言葉に救われました」と感謝のお言葉をいただき、私自身もご遺族の心に寄り添うことが故人への供養につながることを改めて実感しました。